今夜は日本代表 vs ブラジル代表

静かな夜のバー

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今夜は日本戦。

街のあちこちから歓声が聞こえる。

きっと今ごろ、
どこの居酒屋もテレビの前は満席だろう。

でも、この店はいつも通り。

テレビはつけない。

歓声の代わりに聞こえるのは、
氷の音と、
グラスを磨く音だけ。

だから今夜は、
少し暇だ。

だから私は、
今夜も変わらず、
一つずつグラスを磨いて待っている。

「ダブル台風が過ぎ去りましたが」

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二つの台風が、
まるで申し合わせたように日本を通り過ぎていった。

店の扉を開ける前に、
看板を確かめ、
植木を起こし、
空を見上げる。

何事もなかったような青空だった。

機械は壊れたら直せる。

屋根が飛べば張り替えられる。

でも、
人の心は少し違う。

嵐が過ぎても、
仕事のこと、
家族のこと、
言葉にできない不安は、
しばらく胸の中に居座る。

だからバーという場所は、
台風が過ぎた後ほど忙しくなるのかもしれない。

誰かが一杯飲みながら、

「大丈夫だった?」

その一言を交わすだけで、
胸の中の風速は少しだけ弱まる。

今夜も、
グラスの中だけは穏やかな波を揺らして、

BREEZE SURFERSは静かに灯りをともします。

嵐のあとだからこそ、
帰って来られる場所があるのかもしれません。

バーテンダーの守秘義務は絶対です。

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バーテンダーという仕事には、誰にも書かれていない決まりがある。

客の話を外へ漏らさないことだ。

失恋の話。
会社を辞めたい話。
誰にも言えない後悔や夢。

カウンター越しに聞いた話は、カウンターの向こうへ置いていく。

だから私は長いこと、店の裏山に穴を掘っていた。

誰にも言えない話を聞いた夜は、閉店後にスコップを持って山へ行く。

穴に向かって秘密を叫び、土をかけて埋める。

土だけが聞いている。

それで二十年以上、秘密は一つも漏れなかった。

ところがある日、裏山に看板が立った。

「大型マンション建設予定地」

嫌な予感がした。

工事が始まり、毎日ショベルカーが山を掘り返していく。

もし秘密が出てきたらどうしよう。

地中から、

「実は会社を辞めるんです」

とか、

「宝くじが当たったんです」

とか、

二十年分の秘密が噴き出したら大変だ。

だが工事が終わっても、何も出てこなかった。

どうやら秘密というものは、土の中に埋めると、そのうち土へ還るらしい。

その夜。

私は工事現場の隅に放置された大きな蒸気配管を見つけた。

試しに中へ向かって言ってみる。

「実はね……」

声は奥へ吸い込まれ、静かに消えた。

悪くない。

翌日、入口に小さな真鍮のプレートを付けた。

『秘密保管庫』

それ以来、誰にも言えない話を聞いた夜は、閉店後にそこへ行く。

配管の奥へ秘密を預け、蓋を閉める。

すると翌朝には、もう何も聞こえない。

今夜もまた誰かが言うだろう。

「マスター、実はね……」

私はうなずいてグラスを磨く。

秘密保管庫は満杯にならない。

秘密は、話した瞬間に少し軽くなるものだから。🍸

「誰も押さなくなったカウンター」

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昨夜、久しぶりにホームページのアクセス数を見た。

昔は毎日のように数字が動いていた。

新しいカクテルを載せれば増え、
イベントを書けば増え、
誰かがリンクを貼れば増えた。

あの頃は、
ホームページが店の入口だった。

今は違う。

客はSNSから来る。

地図アプリで場所を探し、
営業時間を確認して、
気が向けば写真を眺める。

ホームページはその途中にすら現れない。

だから最近は、
アクセス数を見ても少し笑ってしまう。

二十年以上前に作ったページが、
誰にも見られないまま、
今日も静かに存在している。

でも不思議なものだ。

閉じようとは思わない。

古いホームページというのは、
なんだか店のカウンターに似ている。

賑やかな夜もあった。

朝まで話し込む客もいた。

忘れられない出会いもあった。

今は誰も座っていなくても、

そこにあるだけで、
過ごした時間は消えない。

だから今日も、
古いホームページはインターネットの片隅で灯りを点けている。

誰も押さなくなったカウンターのように。 🍷🌙

「漂着したホームページ」

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Verse 1

あの頃はまだ
モニターが少し重たくて
電話回線の向こう側に
小さな海があった

カウンターの隅で描いた
拙い文字や写真たち
気がつけば二十年も
ここで灯りを守っている

Chorus

誰ももう
ホームページなんて見ないのかもしれない

だけど今夜も
静かにそこに浮かんでいる

時代に置いていかれたんじゃない

波に流されず
ここまで残っただけさ

BREEZE SURFERS

風の吹くままに

Verse 2

新しい街ができては
また消えてゆくけれど

古い看板の錆びた文字は
少しだけ誇らしそうだ

流行りの形じゃなくても
伝えたいことは変わらない

扉の向こうに灯る夜と
誰かを待つカウンター

Chorus

誰ももう
ホームページなんて見ないのかもしれない

だけど今夜も
静かにそこに浮かんでいる

時代に置いていかれたんじゃない

波に流されず
ここまで残っただけさ

BREEZE SURFERS

風の吹くままに

Bridge

古いHTMLの隙間から

昔の笑い声が聞こえる

あの日の客も

帰れなかった夢も

全部どこかに残っている

Final Chorus

存在するだけでいい

そんなものがあってもいい

星空の下のバーみたいに

理由なんてなくていい

二十年越しのページは

今夜も誰かを待っている

扉を開けば

変わらない灯り

BREEZE SURFERS

まだここにいる。

「機械が作れない一杯」

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最近は、

音楽も絵も文章も、
機械が作るようになった。

ホテルのバーでは、
客が自分で酒を作る時代になったらしい。

そのうち、
ロボットがシェイカーを振る日も来るのだろう。

でも不思議なことに、

「今日は何を飲めばいいかな」

という一言だけは、
今も人に向かって言われる。

酒の作り方ではなく、

誰かに聞いてほしい夜があるのだ。

だからたぶん、

機械が最後まで真似できないのは、
酒ではなく、

カウンターをはさんだ人と人が向き合う時間そのものなのかもしれない。