「当たり前の反対って、
なんだと思います?」
そんな話になった。
特別、とか。
珍しい、とか。
いろいろ考えたけれど、
答えは意外な言葉だった。
「ありがたい」
ありがたい、は、
「有ることが難しい」と書く。
毎日、目が覚めること。
誰かと飯を食うこと。
くだらない話をして、
笑うこと。
いつもの人が、
いつもの席に座っていること。
そんなものは、
ずっと続くような気がしている。
だからいつの間にか、
「ありがたい」が
「当たり前」に変わってしまう。
今夜もドアが開いて、
「こんばんは」と誰かが入ってきた。
いつものようにグラスを出した。
でも考えてみれば、
この「いつもの夜」だって、
有ることが難しい夜なのかもしれない。
当たり前だと思った瞬間、
人は「ありがとう」を忘れる。
今夜も店を開けられた。
それだけで、
ありがたい夜だ。
「当たり前の夜なんて、本当は一度もない。」







娘が、自分の名前を書いていた。